診療案内

花粉性結膜炎における診断と治療  治療を始める前に知っておきたい目の表面のこと

花粉性結膜炎における診断と治療

治療を始める前に知っておきたい目の表面のこと

大阪大学 眼科 高 静花先生講演会

 

①点眼薬は局所だけに効果があり全身への影響は軽減出来ます。

 

②点眼薬には塩化ベンザルコニウム(BAK)が防腐成分として入っています。BAKは保存性が高く水に溶けやすく科学的に安定していますが角膜上皮障害を起こすことがあります。また、ソフトコンタクトレンズへの吸着をしたり接触性皮膚炎をおこしたりすることがあります。

 

③アレジオン点眼薬は

1)BAKフリーの点眼薬ですので、BAKが入っている点眼薬でおきる角膜上皮障害を改善することが出来ます。

2)BAKフリーなのでソフトコンタクトレンズ装着時にも点眼が出来ます。コンタクトレンズ装着者におけるアレルギー性結膜炎の患者さんの満足度も高いです。

 

④点眼の使用にあたり注意することがあります

1)点眼薬の回数が基準量を越えてしまうとBAKフリーでも角膜上皮障害や接触性皮膚炎を起こしてしまいます。

2)点眼薬は決まっている回数を守ることが大切です。

3)点眼薬は点眼回数を基準より多くしても効果が上がるわけではありません。

 

⑤ドライ3コン(ドライアイの要因)

1)パソコン

2)エアコン

3)コンタクトレンズ

a)装着により涙液安定性が低下(涙液量の低下)します。(裸眼は涙液の安定性が良いです)

b)装着者の82.6%が乾燥感を自覚しています。

c)コンタクトレンズによるドライアイの治療は涙液補充です。ジクアス点眼薬はBAKフリーの点眼薬で涙液量が増加します。

 

アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法  アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の安全性

アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法

       アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の安全性

            日本医科大学頭頸部・感覚器科学分野 大久保公裕先生

①有害事象(副作用)の大半は治療開始時におきて、数日から数週間で医学的介入なしで改善する口腔内の変化が主なものです。

 

②舌下免疫療法の治療薬であるミティキュアの主な副作用は投与部位である口腔内の局所の症状が主なものです。

 

③舌下免疫療法の治療薬であるシダトレンは治療開始後4週間で口腔内の局所の症状が出ることが多い傾向にあります。

 

④舌下免疫療法における多くの口腔内の副作用は無処置で数時間で消失することが多いです。症状によっては抗ヒスタミン薬を使用しても良いでしょう。

 

⑤舌下免疫療法における口腔以外の副作用は

1)胃部不快感、下痢などの消化器症状に対しては吐き出し法で対処できます。お薬が溶けた後にのみこまずに口から吐き出すのが吐き出し法です。

2)蕁麻疹や皮疹に対しては来院して発疹を確認し一度休薬とします。電話の問い合わせには一度休薬して来院していただく形をとるのが良いでしょう。この時に発疹をスマフォで写真を撮って頂いておくのが役に立ちます。

 

⑥スギとダニの両方にアレルギー性鼻炎がある場合にはスギの舌下免疫療法を一年間治療して問題なければ、スギの舌下免疫療法を夜に内服して、朝にダニの舌下免疫療法の内服をもってくる方法であればスギとダニの舌下免疫療法の併用療法も可能です。

 

⑦抜歯した場合はその日のシダトレンの内服を休めば良いでしょう。抜歯後に出血が止まればシダトレンを再開して良いでしょう。

 

花粉症結膜炎の診断と治療

 花粉症結膜炎の診断と治療

                  順天堂大学 眼科 海老原伸行先生 講演会

 

①スギ花粉症結膜炎の診断と治療

1)花粉症は国民の3割がなっています。

2)花粉症は目の症状(かゆみ)が強い患者さんが鼻の症状でも強い特徴があります。

3)アレルギー性結膜炎では、目のかゆみが一番多くみられる症状です。

4)くしゃみ、鼻水、鼻閉に加えて目のかゆみがQOLの低下につながります。

5)目をこすって花粉症結膜炎が重症になると、眼球結膜浮腫があらわれます。

6)重症アレルギー性結膜炎は春季カタルがあります。

7)アレルギー性結膜炎の3大徴候は以下の通りです。

A)目のかゆみ、充血

B)流涙

C)異物感

8)花粉症結膜炎の患者さんの最もQOLを低下させる自覚症状は目のかゆみであり、

 このかゆみを改善するのが最も大切です。

 

②花粉症アレルギー性結膜炎の治療

1)軽症は抗ヒスタミン薬のみです。

2)中症は抗ヒスタミン薬に加えて膜安定化薬(マスト細胞の膜顆粒を抑制します)が必要です。

3)重症は抗ヒスタミン薬+膜安定化薬+ステロイド点眼薬です。

4)アレジオン点眼薬は抗ヒスタミン薬の効果に加えてマスト細胞の膜安定薬の作用もあります。

5)アレジオン点眼薬投与時の重症度のいかんにかかわらず目のかゆみを抑制します。

6)アレジオン点眼薬は目にしみませんので小児にも適応があります。

 

③抗アレルギー点眼薬による接触眼瞼皮膚炎

1)抗アレルギー点眼薬によりおこる接触眼瞼皮膚炎です。抗アレルギー点眼薬による「かぶれ」です。

2)抗アレルギー点眼薬で感作された期間が長いのが特徴です。抗アレルギー点眼薬の使用期間が長いことになります

3)先発薬品で生じなくてもジェネリック薬品で起こる可能性があります。

4)抗アレルギー点眼薬の中には防腐剤として塩化ベンザルコニウム(BAK)が含まれているものがあります。

 このBAKが入っている抗アレルギー点眼薬の使用例に多くみられます。

 ちなみに、アレジオン点眼薬はBAK(-)で入っていませんので接触眼瞼皮膚炎を起こすことはありません。

 

④ステロイドの点眼薬は必ず眼圧を上昇させます。特に9才以下のお子さんで眼圧の上昇が起こりやすいので注意が必要です。0.1%フルメトロン点眼薬でも30%の患者さんは眼圧は上昇します。

 

⑤花粉症アレルギー性結膜炎の予防

1)点眼液による初期療法があります。花粉飛散の2週間前から点眼液を開始する初期療法です。

 花粉飛散の3週間前からアレジオン点眼液の初期療法を開始しますと花粉飛散時の目のかゆみを低下させます。

2)舌下免疫療法

 舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎だけでなくアレルギー性結膜炎症状も改善します。

 舌下免疫療法を行いますと目の症状が出にくくなりますのでアレルギー性結膜炎の点眼薬の使用する量を減らすことができます。

 

 ダニアレルギーに対する舌下免疫療法の自験57例について

  「ダニアレルギーに対する舌下免疫療法の自験57例について」

  喜平橋耳鼻咽喉科 村川哲也先生講演会より

 

①ダニのアレルゲン暴露は秋がピークです。ダニのアレルゲン量は初秋~晩秋にかけて増加します。

 

②舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎に加えて、アレルギー性結膜炎や気管支喘息への治療効果があります。気管支喘息の発症予防効果や新規アレルゲンの感作を抑制します。

 

③舌下免疫療法を5年間内服しますと、内服中止後7年間は有意な症状の低下が続きます。

 

④舌下免疫療法では、気管支喘息の発症予防が小児でみられています。また、新規アレルゲンの感作予防にも効果があります。

 

⑤舌下免疫療法では2/3の方に副作用がみられますが全体としては、軽症のものが多く舌下免疫療法開始1~2日に多くみられます。副作用で口腔内浮腫が出ましても、呼吸困難にいたることはなく、副作用の症状が回復すれば舌下免疫療法を続けても問題はありません。

 

⑥舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎のみならず気管支喘息にも効果があります。

 

⑦ダニアレルギー性鼻炎では、その70%はスギにもアレルギー性鼻炎があります。血液検査でダニのIgEが高いほどスギのIgEも高くなります。

 

⑧スギアレルギー性鼻炎とダニアレルギー性鼻炎の両方を持っている患者さんでは朝にアシテア(ダニアレルギー性鼻炎のお薬)を内服して、夕にシダトレン(スギアレルギー性鼻炎のお薬)を内服すると良いでしょう。この場合、シダトレンを先に治療開始して、少し経過してからアシテアを追加治療する例が多いです。

 

⑨口腔内や食道のそうよう感、違和感があった場合は気分不良、頻脈、咳などの全身症状がみられなければ軽症と判断して経過観察で大丈夫です。

 

⑩舌下免疫療法で副作用が出やすい患者さんは飲み込まずに吐き出しをすることで舌下免疫療法を継続できます。

 

⑪舌下免疫療法の内服は朝が望ましいと考えられます。副作用が出た時に日中に病院を受診できるからです。

 

⑫舌下免疫療法は維持期であれば一週間程度休薬してもそのまま舌下免疫療法を再開しても問題はありません。

 

⑬学生さんの朝のクラブ活動(朝練)は、副作用が出にくい患者さんは問題ありませんが副作用が出やすい患者さんは内服を夜に変更すると良いでしょう。

 

⑭舌下免疫療法の治療薬である「アシテア」は300単位で口腔内そうよう感が出る患者さんは副作用の出にくい200単位または100単位で継続しても効果があります。

 

⑮スギとダニの舌下免疫療法を同時に行う時には、どちらかを朝片方と夕にと分けて行う必要があります。例えば先行にスギの舌下免疫療法を行い、副作用が出なければダニの舌下免疫療法を朝に開始する時はスギの舌下免疫療法を夕方にして、ダニの舌下免疫療法を朝に開始すると良いでしょう。スギの舌下免疫療法とダニの舌下免疫療法を同時に舌下しますと副作用が出やすいので、同時の舌下はさけて朝と夕方に分ければその心配はありません。

 

⑯スギの舌下免疫療法のシダトレンを先行してダニの舌下免疫療法のアシテアを追加服用する時には、シダトレンの維持期になって1か月間間隔をあければアシテアの追加投与が出来ます。

 

⑰血液検査で好酸球が10%以上の人は重症の気管支喘息が多いので舌下免疫療法の前にロイコトリエン拮抗薬を1か月ぐらい内服して好酸球が下がってから舌下免疫療法を開始しますと舌下免疫療法の副作用が出にくくなります。

ダニ舌下免疫療法は小児のアレルギー史を変えうるのか?

「ダニ舌下免疫療法は小児のアレルギー史を変えうるのか?」

 千葉県立佐原病院 小児科 松山剛先生講演会より

 ①2~10才の気管支喘息のうち

 気管支喘息が先行して発病して、その後にアレルギー性鼻炎合併してくるケースが24.6%有ります。

 逆に、アレルギー性鼻炎が先行して発症して、その後に気管支喘息を合併してくるケースが26.1%有ります。

 

②2才と5才の時点でのアレルギー性鼻炎は学童期の気管支喘息の発症リスクになります。

 

③ヤケヒョウダニは湿潤した地域に多くみられます。

 コナヒョウダニは乾燥した地域に多くみられます。

 

④乳児期は寝具や床に顔をつけたり近づけたりして濃厚なダニ抗原を吸入する可能性があります。

 

⑤家の中のペットはダニのアレルギーの温床です。

 

⑥パンケーキ症候群は、お好み焼きの粉を使って残りの半分にダニが増殖する可能性があるため、このダニによるアナフィラキシーショックのことを指します。

 

⑦5~12才のイネ科のアレルギー性鼻炎(気管支喘息合併なし)に舌下免疫療法を行いますと、気管支喘息の症状やアレルギー性鼻炎の症状を低下させることが出来ます。

 

⑧ダニアレルギーの3~17才のアレルギー性鼻炎では舌下免疫療法のよる気管支喘息発症抑制の効果がみられます。

 

⑨18~65才のダニのアレルギー性鼻炎の患者さんに舌下免疫療法を4年間行いますと、新しいアレルゲンに感作されるのを抑制することが出来ます。

 

⑩小児への舌下免疫療法の効果と安全性は成人と同等です。

 

⑪ダニのアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法をのお薬のミキティアは治療開始後1~1.5ケ月でアレルギー性鼻炎の症状の改善がみられます。

舌下免疫療法の小児への普及に向けて

舌下免疫療法の小児への普及に向けて

      千葉大学耳鼻咽喉科頭頸部外科   米倉修二先生講演会

 

①小児のスギ花粉症は薬物療法群では成人になってもアレルギー性鼻炎の方が多いのに対して、免疫療法群では成人の時にアレルギー性鼻炎が60%は治っています。

 

②小児の通年性アレルギー性鼻炎では、成人になった時に薬物療法群は45%改善なのに対し免疫療法群では77%が改善しています。

 

③シダトレンは小児のスギアレルギー性鼻炎によく効く傾向があります。

 

④重複感作のアレルギー性鼻炎(例えば、スギ、ヒノキ、ブタクサetc.)でも、スギアレルギー性鼻炎にはシダトレンは効きます。

 

⑤どのタイプのアレルギー性鼻炎でもシダトレンは効きます。

 

⑥1シーズン目に重症であったアレルギー性鼻炎でも、2シーズン目には中等

症くらいに、シダトレン使用群では症状の改善がみられています。

 

⑦通年性アレルギー性鼻炎には、舌下免疫療法は充分に効いているという医学的根拠があります。また、5才以上でも効く可能性が高いと考えられます。

 

⑧小児の通年性アレルギー性鼻炎は、血液検査でダニの感作があれば舌下免疫療法が効きます。具体的にはダニのアレルギー検査がクラス2以上もしくはクラス1でも治療対象になります。また、通年性アレルギー性鼻炎の症状が月単位で続いている(1ケ月以上)お子さんも治療対象になります。

舌下免疫療法の現状と最新知見について

舌下免疫療法の現状と最新知見について

         

       千葉大学 耳鼻咽喉科 頭頸部腫瘍学 米倉修二先生講演会より

①ダニの舌下免疫療法の効果が出やすいのは

 1)年齢が12才~17才です。

 2)ダニのIgE検査でRAST4以上です。

 3)血中の好酸球数が7%以上です。

 

②ダニのIgEが高い方が舌下免疫療法で口腔浮腫が出やすい傾向があります。

 

③高齢者のアレルギー性鼻炎の方も舌下免疫療法の適応に入ります。

 

④アレルギー性鼻炎の子供に舌下免疫療法を行いますと喘息やアトピー性皮膚炎を抑制することが出来ます。

 

⑤口腔アレルギー症候群の患者さんでも舌下免疫療法の治療を行えます。

 

⑥スギのアレルギー性鼻炎に舌下免疫療法をしますとヒノキのアレルギー性鼻炎にも60%くらい効果がでます。

 

⑦スギのアレルギー性鼻炎とダニのアレルギー性鼻炎の両方ある患者さんは~

 1)スギを舌下免疫療法で治療して、ダニを皮下免疫療法でと考えてもいいでしょう。

 2)ダニの舌下免疫療法を優先して考えても良いでしょう。なぜならばダニのアレルギー 

   性鼻炎の方が通年性で症状が重いためです。

 

⑧小児で、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎とアレルギーの病気が連続してみられますが、ダニの舌下免疫療法をおこないますとこれらのアレルギーの根本の治療をすることができます。

 

⑨口の中が乾燥する人は舌下免疫療法治療前にうがいをするとよいでしょう。

 

⑩小児では放課後家に帰ってからすぐに内服することが多いです。

 

⑪小児のダニの舌下免疫療法は治療開始後6ケ月位から症状の改善がみられます。

 

 

⑫舌下免疫療法の副作用の対応については

 1)口の中や咽頭に腫れがみられた時は次の日に病院へ行きましょう。次の日に腫れが治っていれば治っていれば舌下免疫療法を再開すればよいでしょう。もし、受診した時に腫れが残っていれば舌下免疫療法は腫れが治るまでスキップして間隔を空けて再開すればよいでしょう。

 2)舌下免疫療法でお腹の痛みが出る人は吐き出し法で対応するとよいでしょう。

   吐き出し法とは、舌下して溶けた後に飲み込まずに吐き出してしまう方法です。

 3)アテシアは初めのうちは舐めるとピリピリすることがありますが1~1.5ケ月で

   消失するケースがほとんどです。

 

舌下免疫療法Q&A

舌下免疫療法Q&A

千葉大学     岡本美孝先生講演会

日本医科大学   大久保公裕先生講演会

①スギアレルギー性鼻炎とダニアレルギー性鼻炎どちらを優先しますか?

岡本美孝先生:症状の強さによって判断します。

大久保公裕先生:小児ではダニアレルギー性鼻炎の方が多いかもしれません。

 

②ミティキュア(ダニアレルギー性鼻炎の治療薬)とシダトレン(スギアレルギー性鼻炎の治療薬)の併用はどうでしょうか?

岡本美孝先生:慎重にします。出来ればどちらかのみの開始をすすめます。

大久保公裕先生:シダトレンの「舌下免疫療法」とダニ「皮下免疫療法」の併用なら問題ないでしょう。

 

③適応患者さんは?

岡本美孝先生:軽度のアレルギー性鼻炎でも治療対象になります。

大久保公裕先生:どの重症度のアレルギー性鼻炎に「舌下免疫療法」を行っても問題はありません。

 

④アレルギー性鼻炎と合併する気管支喘息への「舌下免疫療法」の対応は?

大久保公裕先生:ステロイドを内服しなくて発作がおきていない気管支喘息の患者さんや吸入ステロイドで発作がコントロール出来ている気管支喘息の患者さんが「舌下免疫療法」の適応になります。

 

⑤食物アレルギーを合併するアレルギー性鼻炎の患者さんが「舌下免疫療法」の対応は?

岡本美孝先生:アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの患者さんに「舌下免疫療法」は禁忌とはなりません。

大久保公裕先生:食物アレルギーをもつアレルギー性鼻炎の患者さんには普通に治療します。

 

⑥口腔アレルギー症候群を合併するアレルギー性鼻炎の患者さんの対応は?

スギはトマトと共通抗原をもっていますが、スギアレルギー性鼻炎の人がトマトを食べてもアレルギー性鼻炎の症状は出ません。ですので、

岡本美孝先生:口腔アレルギー症候群を合併するアレルギー性鼻炎の患者さんに「舌下免疫療法」を普通に治療しても問題ありません。

大久保公裕先生:上に同じ。

 

⑦重複感作抗原の患者さん(例えばスギアレルギー性鼻炎とダニアレルギー性鼻炎の両方にアレルギーのある患者さん)への対応は?

岡本美孝先生:スギアレルギーが一番ひどければシダトレン(スギアレルギー性鼻炎の治療薬)で治療すればよいですし、ダニアレルギー性鼻炎が一番ひどればミティキュア(ダニアレルギー性鼻炎の治療薬)で治療すればよいでしょう。

 

⑧ダニアレルギー性鼻炎は?

岡本美孝先生:花粉も飛散していない時期に鼻炎の症状が強ければ通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)としてミティキュアで治療すればよいでしょう。

岡本美孝先生:通年性アレルギー性鼻炎は抗ヒスタミン薬は効果がありません。「舌下免疫療法」の治療は3年~5年が良いでしょう。

 

⑨服用に適した時期は?

大久保公裕先生:朝が良いでしょう。何かあったら病院にすぐ行けます。患者さん自身がリラックスできる時間が良いでしょう。

 

⑩「舌下免疫療法」が気管支喘息の症状を改善出来ますか?

大久保公裕先生:ダニの気管支喘息にはミティキュア(ダニアレルギー性鼻炎の治療薬)が効果があります。

コナヒョウダニとヤケヒョウダニが50%ずつミティキュアに入っています。

 

⑪初回治療開始時の注意点は?

患者さんに治療を続けていただく説明をします。3~5年「舌下免疫療法」で治療して症状が良くなってその後にお薬を中止しても効果が持続します。

 

⑫いつから「舌下免疫療法」の開始が良いでしょう?

「舌下免疫療法」は効果が出るのに3か月かかります。

大久保公裕先生:スギアレルギー性鼻炎はスギの飛散時は避けましょう。毎年11月くらいまでに開始するのが良いでしょう。毎年6~12まで治療開始としても良いでしょう。

岡本美孝先生:スギアレルギー性鼻炎の炎症がありますと下気道の炎症もおきています。ミティキュアはスギ花粉飛散時期を避ける方が良いでしょう。

 

⑬口の中でミティキュアが溶けにくい場合は?

大久保公裕先生:事前に口の中を水でぬらしておいてからミティキュアを舌下すると良いでしょう。

 

⑭副作用の出た時は?

大久保公裕先生:軽微な副作用なら「舌下免疫療法」を続けても良いでしょう。

 

⑮「舌下免疫療法」中に妊娠した時は?

大久保公裕先生:「舌下免疫療法」は続けても大丈夫です。

 

⑯運動は?

大久保公裕先生:「舌下免疫療法」では汗をかくような運動は避けましょう。

 

⑰効果判定は?

大久保公裕先生:「舌下免疫療法」を開始してその後の花粉飛散時期に抗ヒスタミン剤が必要なければ「舌下免疫療法」の効果があったと考えて良いでしょう。

岡本美孝先生:「舌下免疫療法」で1シーズン目に効果がなくても2シーズン目に効果が出る患者さんが50%くらいいます。

大久保公裕先生:「舌下免疫療法」を2年間続けて症状の改善が実感出来なければ「舌下免疫療法」の効果がないと考えて中断するか中止を考えます。

大久保公裕先生:1シーズン目(初年度)の1/2は治療効果を実感出来ます。

大久保公裕先生:「舌下免疫療法」の患者さんに、抗ヒスタミン剤をあらかじめ処方しておいてアレルギー性鼻炎の症状が出ればその都度内服していただいても構いません。

 

⑱治療すべき症状は?

大久保公裕先生:気管支喘息発作がおきた時は「舌下免疫療法」は一時中止とします。口の中のかゆみやしびれ感は「舌下免疫療法」は中止する必要はありません。口の中のかゆみには抗ヒスタミン剤、口の中のしびれ感は「舌下免疫療法」をした後5分たってからのうがいをすると良いでしょう。慢性蕁麻疹が出たら「舌下免疫療法」は一時中止とします。普通の一時的な蕁麻疹なら抗ヒスタミン剤を内服して「舌下免疫療法」中止はしません。

 

⑲副作用

大久保公裕先生:シダトレンの重篤な副作用は蕁麻疹とアナフィラキシーです。ミティキュアの重篤な副作用は報告はなし。いずれも非重篤です。

舌下免疫療法の開始後のポイント

舌下免疫療法の開始後のポイント

                         日本医科大学 大久保公裕先生の講演会                                                                                               

 

①喘息発作時や喘息の症状が激しい時や急性感性症罹患時や体調の良くない時は舌下免疫療法は避けましょう。

 

②通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)の治療薬のミキティアは

1) 治療開始後1~2週間で副作用が起きやすい傾向があります。

2) 治療開始後7日から口腔浮腫が出ますと56日くらい続くことがあります。

3) 治療開始後0日から口腔掻痒感や咽頭刺激感がでることがあります。

 

③スギアレルギー性鼻炎の治療薬のシダトレンは口の中の錯覚感がでることがあります。

 

④通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)の治療薬のミキティアは舌下免疫療法開始後5ケ月経っていれば2週間くらい休薬してもその後に1000JAUから再開しても問題ありません。

 

⑤スギアレルギー性鼻炎の治療薬のシダトレンは最初のスギ花粉飛散終了時点で治療効果を判定します。

 

⑥通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)の治療薬のミキティアは治療開始してから1年以上投与した時点で治療効果を判定します。

 

⑦スギアレルギー性鼻炎は26.5%、通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)は23.4%の頻度でみられます。

舌下免疫療法の開始後のポイント

舌下免疫療法の開始後のポイント

                   千葉大学 岡本美孝先生講演会

 

①通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)は

 1) 頻度は23.4%でみられます。

 2)  家の中のゴミの中のダニが原因です。(ヤケヒョウダニ、コナヒョウダニ)

 3) 軽症から重症まですべて舌下免疫療法の対象となります。

 4) ほこりっぽいところや動物との接触で症状が悪化します。

 

②舌下免疫療法は効果があって終了した場合もその後の効果が減少する可能性があります。

 

③スギアレルギー性鼻炎の治療開始は花粉飛散時期は避けた方がよいでしょう。舌下免疫療法は効果が出るまで3ケ月くらいかかりますので、毎年11月以前に治療開始することがよいでしょう。

通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)の治療薬 のミキティア臨床試験の結果の概要

通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)の治療薬

のミキティア臨床試験の結果の概要

                    千葉大学  今野昭義先生講演会

 

1) 時間が経つほど鼻症状の改善がみられます。

2)  通年性アレルギー性鼻炎(ダニアレルギー性鼻炎)の症状の重いものも改善し、軽いものも改善していきます。

3) 副作用はほとんどが軽症です。

 

「舌下免疫療法」(スギ花粉症最新治療)

「舌下免疫療法」(スギ花粉症最新治療)
日本医科大学 耳鼻科 大久保公裕先生 講演会

①舌下免疫療法の治療薬である「シダトレン」による「口腔内の腫脹」は、舌下してから2時間で消えます。

②舌下免疫療法中、体調の良くない時に「じんましん」が出ることが多い傾向がみられます。

③舌下免疫療法中、誤って多く飲んだ場合は、直ちに吐き出し、うがいをします。そして翌日は、あらためて前日の量を服用します。

④舌下免疫療法中、誤って服用を忘れた場合は、前の日の量を服用します。

⑤舌下免疫療法中、長期休薬した場合の、初回の投与(1ml)は改めてクリニックで医師が行ないます。

⑥舌下免疫療法中、持続する湿疹が出る場合は、「シダトレン」を中止します。この時の湿疹は治りにくい特徴があります。これに比べて、口腔内の副作用はすぐに消えます。

⑦「シダトレン」投与の時には「空らうち」を一回してから本番の「うち」をして下さい。

⑧舌下免疫療法中、スギ花粉症飛散時には、抗ヒスタミン剤の併用を考えますが、全身性ステロイドの投与をするケースは「シダトレン」の治療の対象にはなりません。

⑨舌下免疫療法は12月中旬くらいまでに始めるのがよいでしょう。(スギ花粉飛散時には治療開始はできません)

⑩舌下免疫療法開始後、IgEが増加しますので、スギ花粉症時には、スギ花粉症の症状が悪化する可能性があります。スギ花粉症の舌下免疫療法の効果が出るまで8週間かかります。

⑪舌下免疫療法は7~8月からの開始が良いでしょう。

⑫舌下免疫療法は気管支喘息の場合、吸入ステロイド薬はそのまま併用してよいでしょう。気管支喘息の場合、経口ステロイド薬を使っていない人が舌下免疫療法の良い適応です。

⑬「シダトレン」は本来、スギ単独(+)の花粉症が良いですが、複数抗原(スギ花粉以外)(+)のスギ花粉症でも良いでしょう。

⑭舌下免疫療法は継続期で1週間あいてしまった場合は、始めたばかりの時期でしたら初期に戻してから再開しますが、かなりたってからの時期では元に戻らず同じ量で再開します。

⑮舌下免疫療法中、口内炎が出来ましたらデキサルチン軟膏を併用しながら「シダトレン」を継続します。

⑯口腔底が腫れてかゆい時は、休薬して抗ヒスタミン剤を1週間のんで口腔底の腫れがとれるのを確認してから「シダトレン」を再開します。口腔の腫れを気にして抗ヒスタミン剤を使い続けながら「シダトレン」を使うことはありません。

⑰「シダトレン」治療中のインフルエンザの注射は問題ありません。

⑱「シダトレン」は1億回に1回の少ない割合でアナフィラキシーがおこることがありますが、とても少ない頻度です。

⑲「シダトレン」開始後の初回の花粉症の時期に以前と比べて症状が改善していれば、効果ありと考えて良いでしょう。

舌下免疫療法の実際と今後

舌下免疫療法の実際と今後
千葉大学耳鼻科 岡本美孝先生講演会

①何故、アレルゲンの免疫療法が必要かといいますと~
1)スギ花粉症の自然改善は少ないのが特徴です。
2)特にお子さんは一度アレルギー性鼻炎にかかりますと成人になってもアレルギー性鼻炎になっています。
3)薬物治療は対症療法です。
4)アレルゲン免疫療法は、唯一、スギ花粉症を治す治療法で、治療効果が長く続きます。
5)アレルギー性鼻炎にアレルゲン免疫療法をおこなっておきますと、将来ぜん息になることを予防することが出来るのです。

②舌下免疫療法(SLIT)
1)自宅での投与が可能です。
2)痛みがありません。
3)重篤な副作用が激減します。(死亡例の報告はありません。)
4)鼻水、くしゃみ、鼻閉、目のかゆみ、涙目にも効果があります。
5)舌下免疫療法開始後、最初の花粉の飛散期よりも翌年の花粉の飛散期の方がアレルギー性鼻炎の症状改善が大きくなります。
6)副作用は舌下免疫療法開始後の1ヶ月以内に多くみられますが、口腔内のかゆみなどの副作用は4週間以内に改善します。
7)舌下免疫療法の効果が出るまで8週間かかります。
8)局所の副作用の頻度が高いですが、多くは軽症です。
9)アナフィラキシー反応の報告は1億回に1回ととても少ない頻度です。
10)スギ血清IgE抗体をもっている人のうち30%しかお子さんではスギ花粉症は発症していません。
11)重症のぜん息や癌の治療を受けている人や全身をステロイド投与中の患者さんは舌下免疫療法の適応にはなりません。
12)妊婦さん、産婦さん、授乳婦さんの方は舌下免疫療法の適応外になります。
13)スギ以外の花粉のアレルゲンの特異的IgE抗体検査が高い人は舌下免疫療法は適応になりません。
14)舌下免疫療法を行ないながら、アレルギー性鼻炎の症状が出ましたら、通常のアレルギー性鼻炎の速効性のお薬を併用すると良いでしょう。

 

「舌下免疫療法」の基礎と実際

スギ花粉の最新治療法
「舌下免疫療法」の基礎と実際
日本医科大学 耳鼻科 大久保公裕先生講演会

①小学生のスギ花粉症は65%(スギRAST 2)みられます特徴は、発作性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉の3症状です。 小児期発症のものと成人発症のもの通年性のものと季節性のもの、屋内で症状がでるものと屋外ででるものと、アレルギー鼻炎にはそれぞれ特徴があります。

②「舌下免疫療法」の「禁忌」
次に該当する方は「舌下免疫療法」の治療は受けられません。
1)β2阻害薬(例、ミドリン点眼薬)を使用している患者さん。
2)「舌下免疫療法」開始時に妊娠している方。
3)重症の気管支喘息。
4)全身性の重篤の疾患(例、悪性腫瘍)。
5)全身性ステロイド治療中の患者さん。

③「舌下免疫療法」の治療の対象条件
1)長期間(2年間)の治療を受ける意志のある方。
2)全ての患者さんに効果が期待できる治療方法で無いことを理解していただける方。
3)効果があって終了した場合にその後に効果が減弱する可能性があることを理解できる方。
4)小児では12才以上のお子さん使用できます。
5)「舌下免疫療法」はスギ花粉症以外の他の花粉症では使用出来ません。

④「舌下免疫療法」の注意点
1)初回投与はクリニックで医師が行ないます。
2)舌下投与(舌べろの裏側に薬を摘下します)後は少なくとも2時間は激しい運動や入浴はさける必要があります。
3)投与をみあわせる時は次の時です。
A:気管支喘息発作や喘息の症状がひどい時。
B:抜歯後の口腔炎症の術後や口腔内に炎症がある時。
C:発熱時や寝不足時で口腔内のかゆみがひどい時。
D:発熱などで「舌下免疫療法」一時中断する場合は「舌下免疫療法」の再開は2週間くらいあけて再スタートします。
4)舌下投与使用を忘れた時には、最後に舌下投与した次の日の量で再開します。
5)舌下投与中の患者さんで途中妊娠した時には舌下投与(舌下免疫療法)は継続しても大丈夫です。
6)花粉症の季節(1~2月)には「舌下免疫療法」は始められません。開始するのは「11月」ごろからが良いでしょう。
7)服用を忘れた場合は、当日であればその日の投与量で投与して、前日忘れた場合は翌日の投与量を服用すれば大丈夫です。
8)服用を一時中断した場合「舌下免疫療法」開始後2週間までの間なら開始量に戻って再開しますが「舌下免疫療法」開始後3週間以降の場合は同じ量なのでそれで再開します。

⑤「舌下免疫療法」とアナフィラキシー
1)「舌下免疫療法」で舌下投与後数分でアナフィラキシーがおこることがあります。
2)「舌下免疫療法」のアナフィラキシーの特徴として
A:気管支喘息合併の方に多くみられます。
B:女性に多く見られます。
C:舌下後数分以内に症状が出るのが多いです。
D:ラテックスアレルギーがある方がいます。

⑥「舌下免疫療法」とステロイド
1)全身性のステロイドを使う可能性のある患者さんは「舌下免疫療法」の適応になりません。
2)万が一、一時的に全身性のステロイドを使用された時には全身性のステロイドの終了後、2週間あけてから「舌下免疫療法」を再スタートすると良いでしょう。
3)「舌下免疫療法」中に、ステロイドの点鼻薬はアレルギー性鼻炎の症状の目立つ時だけ使用すれば問題はありません。
4)「舌下免疫療法」投与中に全身性のステロイド(例えばセレスタミン)を内服する必要のある患者さんは「舌下免疫療法」の適応にはなりません。
5)「舌下免疫療法」投与中では気管支喘息の治療薬の吸入ステロイド薬は継続使用して問題はありません。
6)「舌下免疫療法」投与で口の中のかゆみが出た場合には抗ヒスタミン剤を一時的に使えば良いでしょう。
7)「舌下免疫療法」はonly therapy(単一治療)が良いでしょう。
8)スギの「舌下免疫療法」は夏から開始するのが良いでしょう。
9)「舌下免疫療法」開始前に呼吸機能のチェックが必要でしょう。ピークフローでしたら、男性600、女性400あれば大丈夫でしょう。

⑦「舌下免疫療法」の副反応
1)「舌下免疫療法」の副反応は3~8%です。
2)口腔内のかゆみや腫脹などの局所反応があります。
3)消化器症状として悪気や腹痛があります。消化器症状は投与量に依存しています。
4)致命的な副反応は今まで一例もありません。(死亡例はありません。)
5)アナフィラキシーの発現は1億回に1回くらいの頻度しかありません。
6)アナフィラキシーの局所の症状はほとんど軽微です。
7)アナフィラキシーは
A:皮膚粘膜症状として「蕁麻疹」や「紅斑」があります。
B:呼吸器症状として「呼吸困難」「喘鳴」「喉頭浮腫」「鼻炎」があります。
C:循環器症状として「低血圧」や「末循環器不全」や「めまい」があります。
D:消化器症状として「悪気」や「腹痛」があります。
8)「舌下免疫療法」中にアナフィラキシーを起こした場合は心疾患があってもアドレナリン0.3mgを筋注投与して良いでしょう。また、下肢も挙上して寝かせましょう。アナフィラキシーの処置をした後には入院が必要です。

⑧「舌下免疫療法」と「気管支喘息」
「舌下免疫療法」におけるアナフィラキシーは、気管支喘息の合併が多くみられます。「気管支喘息」のコントロールが良好な状態のなるまでは「舌下免疫療法」は開始しないことが大切です。

写真

アレルギー性鼻炎のこどもに併発することが多い病気です。
目の白いところが赤く充血して眼球をこすってかゆがります。

眼球はこするとその表面に傷がつきやすいので、早めにお薬を使ってこするのを防ぐことが重要です。通常は目やには出ません。

目やにが出るときは細菌性の結膜炎の合併を考える必要があります。

幼稚園や小学生の女の子で、猫にさわられた後にアレルギー性結膜炎がでることが多く見られます。


おそらくは、猫アレルギーでひきおこされたアレルギー性結膜炎だと思います。


治療は点眼薬が主体ですが、目のかゆみが強いケースではかゆみ止めの、のみ薬が有効です。

「子どものアレルギー性鼻炎診療のポイント」

国立三重病院 耳鼻咽喉科 増田佐和子先生講演会

子どものアレルギー性鼻炎とは~

①高い有症率があります。
②低い治癒率があります。(つまり、治りにくいということです。)
③発症年令が早まっています。
④幼児前半から「ダニ」に対してのアレルギー性鼻炎が始まります。
 「ダニ」は0~3才でアレルギー性鼻炎が始まり
 「スギ」は2~5才でアレルギー性鼻炎が始まります。
 4才以上の大半が「ダニ」と「スギ」の両方のアレルギー性鼻炎があります。

⑤「喘息」(2~10才)の約80%がアレルギー性鼻炎を合併しています。
⑥アレルギー性鼻炎合併の「喘息」の1/3で鼻炎症状が先に出現します。
⑦幼児期のアレルギー性鼻炎は成人期までの「喘息」発症と持続のリスクがあります。
⑧幼児期のアレルギー性鼻炎は成人しても安心は出来ません。

⑨アレルギー性鼻炎のお子さんは次のような問題があります。
 1)外で遊べない
 2)集中出来ない
 3)夜よくねむれない

⑩幼児のアレルギー性鼻炎の保護者はお子さんのアレルギー性鼻炎にストレスを感じています。
⑪アレルギー性鼻炎はアデノイドや扁桃肥大に続く中等症以上の「いびき」の危険因子で睡眠障害をおこしてきます。小児のアレルギー性鼻炎の治療をしますと睡眠の質が改善して良くなります。
⑫アレルギー性鼻炎と成積低下は関連があります。成積が下がったお子さんはアレルギー性鼻炎あります。
⑬アレルギー性鼻炎と合併した「喘息」のお子さんは「喘息」による入院や受診が多い傾向があります。
⑭アレルギー性鼻炎は「喘息」の危険因子です。
⑮お子さんのアレルギー性鼻炎では、「くしゃみ」「水性鼻汁」「鼻閉」が必ずしも全てみられることが多い傾向があります。

⑯小児のアレルギー性鼻炎では、皮膚の症状が多くみられます。
⑰小児のアレルギー性鼻炎では、鼻出血が多くみられます。
⑱小児のアレルギー性鼻炎では、鼻や目をこすることが多くみられます。
⑲室内での花粉除去こそがアレルギー性鼻炎では大切です。40%が着衣に付着したもので、60%が換気によるものです。
⑳鼻噴霧用ステロイド薬はアレルギー性鼻炎症状の悪化した時だけではなく連日継続した方が良いでしょう。

~アレルゲンとアレルゲン免疫療法~

岡山大学耳鼻咽喉科 岡野光博先生講演会

①血液検査でアレルギー反応がみられていないのに鼻の粘膜だけに鼻炎がおこることがあり、これを局所(または潜在性)鼻炎といいます。
これは、全身的にはアレルギーがなくて局所だけにアレルギーがある鼻炎です。
主に成人にみられますが、小児では少ない特徴があります。

②口腔アレルギー症候群(OAS)
1)花粉症に合併していることが多いです。
  ・ バラ科の植物の花粉症ではリンゴ・サクランボ・モモ・ウメ・ナシのOASの合併症がみられます。
  ・イネ科の花粉症ではトマト・メロン・スイカ・オレンジのOASの合併症がみられます。
  ・スギ科の花粉症ではメロン・リンゴ・モモ・キゥイのOASの合併症がみられます。
このうちイネ科の花粉症に舌下免疫療法が効きます。
(症状の改善及び併用薬を優位に優位に減量できます。)

③アレルギー性鼻炎における昆虫アレルギー
アレルギー性鼻炎では、昆虫に対するアレルギー率が高く、ガ・ユスリカ・ゴキブリが多くみられます。

④職業性のアレルギー性鼻炎もあります。
例えばパン職人に生じた小麦粉鼻炎というものもあります。

⑤粉もんアレルギー(お好み焼き/たこ焼き)に混入繁殖したダニを摂取することにより生じる「アナフィラキシー」があります。これは小麦ではなくダニによる「アナフィラキシー」です。

⑥オノンはアレルギー性鼻炎の症状が出始めに内服してもアレルギー性鼻炎の改善があるお薬です。
これはオノンが短期間で効果が出るためです。

⑦アレルゲン免疫療法
1)抗ヒスタミン剤を内服しながら皮下免疫療法をするとよいでしょう。
2)免疫療法の長期作用として、
  ・新たなアレルギーを起こすのを抑制することが出来ます。
  ・アレルギー性鼻炎に対して免疫療法を行いますと3年後のぜん息の新規発症率を抑制することが出来ます。免疫療法は治療終了後も治療効果が継続しています。
  ・ハチ毒アレルギーには免疫療法がとても良く効きます。

⑧舌下免疫療法
1)副作用が少なく家庭内投与が出来ます。(死亡例の報告は1例もありません。)
2)適応は「アレルギー性鼻炎」と「ダニアレルギー」です。
3)禁忌(使用できないのは)
   ・B-ブロッカーを使用されている方
   ・妊婦さん
   ・不安定な気管支喘息
4)成人に優意な効果がありますが、小児(お子さん)でも有効です。日本では12才以上のお子さんが適応になります。
5)高齢者(60~75才)のアレルギー性鼻炎にも適応があります。
6)多重感作例(例えば数種類の花粉にアレルギーがあるようなケースです。)でも効果があります。
7)14歳以上の小児のアレルギー性鼻炎に舌下免疫療法行いますと新規のぜん息の発症を抑制できます。さらに舌下免疫療法を終了後も治療効果が継続出来ます。

QOL向上を目指した花粉症治療と対策

東京慈恵医大 耳鼻科 松脇由典先生講演会

1.高校生で季節性アレルギー性耳鼻科(花粉症)は学習能力の低下や試験で良い成績を収められないことと関連します。

2.抗原回避

スギ花粉症で空気清浄器は次のようなメリットがあります。

①室内で有効です。特にへパフィルターが着いた空気清浄器がスギ花粉の回避に有効があります。

②鼻の症状だけでなく眼の症状(眼のかゆみ・流涙)にも効果があります。

③花粉が飛び終わった後も花粉症の患者さんはしばらく症状が出ますが、ヘパフィルターの空気清浄器を使っていますと、この花粉が飛び終わった後の症状も抑えることができます。

④(市販の)空気清浄器は花粉症に対して鼻の症状だけでなく眼の症状も改善します。

⑤空気清浄器の設置場所は寝室の枕元の近くがよいでしょう。

⑥花粉症の期間中は空気清浄器は24時間運転し続けることが大切です。

知って得する抗ヒスタミン薬の豆知識

NTT東日本関東病院 五十嵐敦之先生講演会

①第二世代の抗ヒスタミン薬は個人差がかなりあります。

②このため効果が不十分の時には、抗ヒスタミン剤を二剤に併用するよりも、同じ抗ヒスタミン剤の単独の増量の方が良いことがあります。
例えば一日一回一錠のものは、一日一回二錠に増量することで血中濃度が上がり効果が出ます。

③自動車の運転制限がないのは、アレグラ・クラリチンです。

④ザジテン・ジルテック(ザイザル)・クラリチンは痙攣の報告があります。

⑤アレロック・アレジオン・セルテクトは幼児に使える痙攣のない、抗ヒスタミン薬です。

⑥ジルテック・クラリチンは妊婦さんの「蕁麻疹」に使えます。

⑦クラリチン・アレグラは授乳しているお母さんにも使えます。

⑧高齢者にはアレグラ・アレジオンが使える抗ヒスタミン薬です。

⑨呼吸が最も速いのは、アレロック・ザイザルです。

⑩腎不全の患者さんには、アレグラ次いでアレジオン・エバステルが使えます。

⑪エバステルは頓服として使用するのは不適切です。
エバステルは、かゆい時だけ頓服で内服しても効果がありません。

小児のアレルギー性鼻炎

小児のアレルギー性鼻炎

One Airway,One Diseaseの観点から

国立三重病院 増田 佐和子先生講演会より

 

1.幼児から10才にかけてのアレルギー性鼻炎が増えています。

2.アレルギー性鼻炎の抗体は
 
①ダニは0~3才に増加しています。

②スギは2~5才に増加しています。

③ダニとスギは4才以上で両方のアレルギーが増加しています。

3.ぜん息の80%はアレルギー鼻炎を合併しています。

4.アレルギー性鼻炎の30~40%は、ぜん息を合併しています。

5.小児期発症のアレルギー性鼻炎は、成人期のぜん息発症のリスクを高くします。
  例えば7才までにアレルギー性鼻炎がありますと、43才でのぜん息の発症が高くなります。
子どものアレルギー性鼻炎は成人になったときに、ぜん息になる確率があることに注意が必要です。

6.2~10才のぜん息のお子さんの約80%がアレルギー性鼻炎を合併しています。
  この中にはお母さんが気がついていない無症候性のアレルギー性鼻炎があります。

7.アレルギー性鼻炎合併のぜん息のお子さんの1/3が鼻症状が先行に発症しています。

8.アレルギー性鼻炎は2才くらいまでに発症します。

9.アレルギー性鼻炎合併のぜん息ではアレルギー性鼻炎の症状が悪化するとぜん息の症状も悪化します。

10.お子さんのアレルギー性鼻炎は増加していまして、その背景にはアレルギー性鼻炎の発症の低年齢化があります。

11.子どものアレルギー性鼻炎で困るのは

①鼻閉→口呼吸が常態化します。

②鼻汁→鼻をかまずにすすってしまいます。(自覚症状を感じにくい傾向にあります。)

③お子さんが目や鼻をこするのがお母さんは困ります。

④お子さん自身が目や鼻をこすってしまうのを困っています。

⑤外遊びやスポーツをすることができません。

⑥夜間よく眠れません。

⑦お子さんにアレルギー性鼻炎がありますと、お母さんはよりストレスを感じてしまいます。

⑧アレルギー性鼻炎は「いびき」の危険因子にもなります。
 お子さんの「いびき」の危険因子は、
 1位 アデノイド
 2位 扁桃肥大
 3位 アレルギー性鼻炎なのです。

 

⑨お子さんのアレルギー性鼻炎を治療しますと、お子さんの睡眠の質が改善します。

⑩くしゃみ・鼻汁・鼻閉以外にアトピー性皮膚炎などの皮膚の症状も多くみられます。

12.症状として注意することは

①朝起きた時に「くしゃみ」がありませんか?

②お口を空けて過ごしてませんか?

③アレルギー性鼻炎に加えて副鼻腔炎も合併している時には、両方の病気の治療が必要です。

④片側だけの膿性鼻漏は「鼻異物」のことがあり、見過ごされることがありますので注意しましょう。

⑤夜間の呼吸困難と「いびき」の場合は、アデノイドによる睡眠時無呼吸症候群がありますので、この場合には手術が必要です。

 

13.お子さんのアレルギー性鼻炎の点鼻ステロイド薬は症状が出た時だけに使うのではなく、継続して使用して炎症をしっかりと抑えることが大切です。

14.中等症以上のぜん息で、アレルギー性鼻炎もあるお子さんに

①キプレスの単独内服例では、鼻と咳の症状がよくなります。

②吸入ステロイド薬単独使用例では、咳は良くなりますが鼻は良くなりません。

③吸入ステロイド薬単独使用例では、アレルギー性鼻炎の改善にはなりませんが、キプレスの単独内服ですと、アレルギー性鼻炎もぜん息にも改善がみられます。

15.お子さんのアレルギー性鼻炎は症状の自覚や訴えが乏しいのが特徴です。

16.早期にお子さんのアレルギー性鼻炎の治療を開始しますと、鼻炎の増悪やその後のぜん息の重症化も防ぐことが出来るかもしれません。

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